C.D.I.って何?
C.D.I.といえば耐寒性、始動性、耐かぶり性、燃費の向上がよく知られている。C.D.I.とは容量放電点火(Capacitive
Discharge
Ignition)の略で、名前のとおりコンデンサ(キャパシタ)に蓄えた数百ボルトの電圧をイグニッションコイルの1次側に接続する装置である。
他の点火装置はポイント式からセミトラ、さらにフルトラへと進化したが、これは所詮ポイント部のスイッチング接点のみの進化であって、C.D.I.の発想とは根本的に異なる。ちなみに原理が違うのでポイント式接点の車でもC.D.I.点火装置は取り付けることが出来る。
なぜC.D.I.が車に普及しなかったかというと、開発された20年も前の技術レベルでは、半導体の性能と電流増幅率と内部抵抗の兼ね合いから瞬時に大電流を流す必要のあるC.D.I.はコスト的にも釣り合いが取れず、そもそも、一般のエンジンに点火する場合に必要な熱量は20mJから30mJと言われているので普通の車には通常必要なかったのだ。
また、C.D.I.が一番優れている省エネについても当時は現在のように言われておらず、省エネを前面に出しても価格が折り合わず見向きもされなかったのだ。
また、最近の車はダイレクトイグニッションでC.D.I.が使えない場合がほとんどである。もし使おうとするとC.D.I.が複数必要になってしまう。
また回路自体が複雑で非常に高価になり、単純な他の点火装置に比べて値段相応のメリットは得られない。
それなら従来の点火システムでよさそうだが、高回転でパワーを稼ごうとすると通常の点火システムでは役不足になる場合がある。
なぜなら、ノーマルでの設計性能を大幅に上回るパワーを得ようとするからである。バイクにC.D.I.点火装置のチューンが一般的なのはエンジンが車とは比較にならないほど高回転なために、取り付けるメリットが大きいからである。
C.D.I.点火の場合には通常の点火方式よりも高い電圧を短い時間充填する為、デスビ方式で起る高回転時の接点時間の短さによるコイル立ち上がりの悪さをカバーする事が出来るのだ。
さて、車では点火系統の強化にC.D.I.を使ってもメリットがあまりなさそうに書いてしまったが、どのくらいの効果があるのだろうか?実際レベルでは明らかに点火能力の不足する車にC.D.I.を付けると、体感できるくらいに変化するはずである。
うまく取り付けることができれば冒頭で述べたように2ストのSJ10、SJ30ユーザには嬉しい耐寒性、始動性、耐かぶり性、燃費の向上が望めるはずだ。
現存する他のフルトラ、セミトラ、ポイント式とC.D.I.点火装置との違いは、IGコイルでの高圧を発生する原理の違いにある。他の点火装置では、通常は12Vを加えて、その逆起電力で高圧を発生するシステムにダイレクトに高圧をかけてしまう。
原理的には12V電圧でIGコイルの1次側に電流を瞬時に流すと、フレミングの法則により磁気が発生、点火タイミングとなった時に、通電電流がなくなるとためていた磁気が減少するのでフレミングの法則で電気が発生しIGコイルの1次側に電流が流れ、2次側には高圧の電流が発生するというものである。
一方、C.D.I.点火装置では、点火用エネルギーをIGコイルに磁気としてためるのではなく、まずC.D.I.内のコンデンサに数百ボルトの高圧の電荷をためて、点火タイミング時にスイッチング素子によってコンデンサにためられていた電荷を放出、IGコイルの1次側に電流が流れることで2次側にはさらに高圧の電流が発生するというものである。
だから、2次電圧の立ち上がりは急なので2次電圧そのものもノーマルとは比較にならないほどアップする。欠点は、放電時間が短いことで、ノーマルの半分以下である。高回転時では長い放電時間は不要なので特に問題にはならないのであるが、アイドル時など低回転では逆に火が付きにくいことになる。とくに高圧縮・高回転型のエンジンは圧縮比に比例して点火しにくくなる。レーシングプラグにナローギャップが多いのもその為。
点火装置の能力が高ければワイドギャップの方が火が付きやすいが、高回転ではドエル時間が不足してしまうのだ。
しかし、プラグの早期漏電の原因であるカーボンの影響は受けにくくなる(プラグがよごれにくい)。他の点火方式に比べてエネルギー変換効率が良いためにバッテリーの電圧降下が少なく、点火必要電圧以上の電圧設定ができるため、始動性に優れるのである。
つまり寒冷地等で問題となる電圧降下の影響を受けにくいわけだ。
また、2ストでよくある「エンジンがかぶる」ということに強くなる。
かぶりに強いのは、高圧発生の原理が違うためで、他の点火装置で電圧上昇中に火花放電可能な電圧に満たないうちに漏電してしまうのに対して、C.D.I.点火装置では最初から火花の放電電圧の安定した上昇が得られることによる。つまり寒冷地や、使用回転域にかかわらず、安定した着火火花を飛ばせるので燃焼効率が向上するのである。
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