MILITARY JIMNY MANIA!! (1)

 
我が家にまたジープがやってきた。←動画で見る

  これが私が一目惚れして 、今まで大事にしていたSJ10を手放してまで購入してしまったという車である。

 いくら車好きでも一見しただけでは全くこの車が何なのかわからないだろう。事実、ガソリンスタンドや街角で声をかけられることが多いが、未だに当てた人はいない。

 ちょっとジープを知っている人なら、これはウイリスのM38に見えるかもしれない。M38はあのウイリスMB/フォードGPWの後継機種で、1951年に登場したジープである。MB(1941(昭和16)〜1945(昭和20))が368,714台と大戦中に33万台製造されているのに比べてM38は戦後の(1950(昭和25)〜1951(昭和26))に60,345台生産されたにすぎないが、ローフードジープとしては次のM38A1やM151よりはるかに完成された車両としてマニアには抜群の評価を受けている。

 でもナンバーは黄色だし・・?よく見るとウインドウ周りも微妙に違うような?さらに見るとフリーホイールハブだし?。

 実はこれはジムニーである。H2年式の5速EPIインタークーラーターボのJA11の床下及びバルクヘッド周辺をエンジンと共に残し、これにJ3のウインドウとボンネットを載せ、あとはグリルを含めてボンデ鋼板をつなぎ合わせて現物合わせで作ったという代物。 キャノピーはFRP製で一品製作で成型したというものである。

 すべてのB.O.マーカーは本物 。

 
 後ろに写っているのは見に来た隣人(汗)。

 

↓こちらは制作途中の写真。すべて切った貼ったで製作されていることがわかる。

 ボディはすべてボンデ鋼板
 フロントグリルはジープJ3の物を詰めて製作
 ドアは鉄板製
 この車が対向車では誰もジムニーとは思わないだろうなあ
 素人考えで語れば、「なんだ、MBのリプロボディ(俗に言うフィリピンボディ:50万円程で入手できる)を使ってジムニーのシャーシに載っければいいじゃん。」と思うのだが、製作した知人によると、MBとジムニーのボディサイズは酷似しているもののまず無理とのこと。このミリタリージムニーはナンバーのとおり、軽登録となっている。白ナンバーにすることなく登録しようと思うと元々の車のフレーム自体の規格に制約されるため、この場合はJA11の大きさ以内に製作しなければならないことになる。

 実際はジムニーJA11はエアコンのコンデンサがあり、エンジン自体もジープよりかなり前方に固定されていてエンジンルームが長く、ノーズとボディの長さの比も違う。 バルクヘッドの位置なんてジープより30pくらい前方だ。ジープがリアフェンダーに半分腰掛けるようなスタイルなのに対して、ジムニーは前方。また、ジープの幅は登録上サイドステップ幅となっていて、リアゲートの部分の車幅は幾分狭いものの、ジムニーのほうがさらに狭いので旧の軽規格をオーバーしてしまう。 今のJB23だったら幅は+80mmの1480mmまでOKなのでナロージープの幅でもいけるかもしれないが、ホイールベースが長いのでうまく収まらないかもしれない。

 何より合わないのは床下であり、シャーシ形状と駆動系のレイアウトが全く違うため、ヒーターの取付場所さえ無くなり、 センタートンネルを含めてその位置合わせと加工の大変さを考えると外装を作ってしまった方がずっと楽だというのだ。

 一番感心するのはキャノピー部分である。しっかりとした分厚いFRPボディはジムニーのリアサイドウインドウ部から型をそのまま取った他は全て鉄板で型を起こしてガラス繊維を積層して4分割で製作されており、FRPの成型をしたことのある人なら解ると思うが、その手間たるや想像を絶する作業である。
 
 ドアは鉄板製であるが、微妙なアールを描いて作られたデザインは野暮ったい幌ドアやノーマルジムニーのバンボディと違って良い雰囲気で、オリーブに塗り分けられたセンスがこれまたイイ。

 さて、ひとつ難を言えば現状では異様なほどの腰高感がある。エンジンの高さに合わせてボンネットを載せ、ローフードのコダワリからそのラインに一直線となるようにボディタブを合わせたからで、 若干ボディリフト気味になっているせいである。 しかし、これは本当にジープのボディをそのままジムニーのフレームに無理矢理載せようとした場合、ベースにSJ30を使うと多少はエンジンの小ささによる位置合わせが可能なものの、さらに酷いボディリフト状態となり、重心位置が高くなってジープどころかジムニーの安定性さえ失われるとのこと。

 また、先に述べたバルクヘッドの位置の違いからハンドル高さやシフトノブの位置などが非常に不自然な場所になるらしい。ましてやエアコンがありエンジンの大きなJA11ではさらに自由度が無いため合わないのはSJ30の比ではなく、このくらいの腰高感はまだよしとする。さらにMBは6.00-16タイヤだったが、M38は7.00-16のはずなので、これらを含めてそのうちサスペンションの位置を変更したり、タイヤサイズも換えて解決してみようと思う。

 

左サイドビュー。B.O.マーカー(軍事用で夜間行動時、上空からの攻撃を避け必要最小限の灯火と識別をするために付けられたライト)をはじめ、左サイドの給油口(使用は不可)、トップボウのブラケットやサイドミラーなど細かいところが本物の部品を使って作られていて実に凝っている。

 フロントパネル部はFRP製。メータアッシやハンドルはJA11のものをそのまま使用しているが、ちゃんとエアコンも ガンガン作動するし、MP3の聞けるCDオーディオも取り付けた(邪道?)のでドライビングは実に快適である。

 キャノピーはボルト止めのため、すべて外すのに16本のボルトを緩める必要があり、オープンにするにはちょっと面倒。しかし、このFRPキャノピーってのは幌と違って風切音はしないし、バンボディと 同じなので一般的な使用ではこちらが優秀である。キャノピーは一人で簡単に持ち上げられるほど軽く、ボディの軽量化と相まってパワーウエイトレシオも多少は向上しているはず。実際にオープン状態で走らせると飛んでいくように速く感じる(笑)。

 

 これを2年かけて作製した知人に言わせると、「ジムニー雑誌は数あるが、そのほとんどは単に部品を付けただけでカスタムとは言えない。これこそがカスタムの真髄だ。」と 豪語する。 他にもJ58とJ54を所有するジープ好きの彼は、今度はまた自分のためにローボディのMBを同じようにJA11ベースで製作途中である。 しかし、ここまで しなくともMBボディを載せたJ3とかに乗った方が良さそうなのになぜ苦労してジムニーベースにこだわるのか?

 現在、ジープはご存知の通り都市部ではディーゼル規制に引っ掛かるため車検を受けられない。トラックカテゴリであるジープではガソリン車であっても排ガス規制のため同じである。 構造変更等で乗用車にする手もあるが、所詮ジープ。乗り心地は悪いし、エアコンもなく、エンジン音はうるさく会話もままならない。
 
 そもそもJ58など大きすぎる。ナローかJ3なら小さいが安心して乗れるかといえばNOであり、最大の障壁となる部品供給や修理も不安だ。維持費もかかる。しかしこのジムニーならどうだろう。軽自動車なので税金は安く、JA11がベースならオリジナル ジープよりずっと速く 快適で、また今後部品供給には全く不安はない。ボディは単純なので板金も比較的楽である。まったくのレストアラーでオリジナル や純正度にこだわるのでなければ高速も走れてエアコンも効き、完全にラフな日常の足として使える「なんちゃってミリタリージープ」は結構いじれて気軽に乗れるため面白いのではないだろうか。

 だいたい、私は車道楽に見えるかもしれないが遊ばせておく車を持つほど裕福ではないので、通勤に、買い物にと完全に普段の足にならないと話にならない(汗)。

 さて、ひとつはジープを知り尽くしたマニアな彼が完全に自らが乗るために製作したコダワリの一品だからという理由もあるが、「これこそがカスタムの真髄だ。」という言葉で私はこのジムニーが滅茶苦茶気に入ったのである。

 

 しかし・・その後すぐにトラブル続きになるとは予想もしなかったのだ・・・(泣)。
 
 

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